喫茶 evance にて

喫茶店へ入った。
窓辺に座った。
jazzが流れていた。
ピアノの音が心地よく響いてくる。
コーヒーを頼んだ。
タバコに火をつけて、
窓越しに通りを眺めた。
陽射しだけが暑さを伝えている。
「ピーン」とかすかに音が聞こえた。
懐かしい音だ。
「ほら、これできるかい。結構難しいんだぜ。」
片手でZIPPOを持った友達が言った。
親指の腹を蓋の上に置き、
そっと撫でるように横にずらすと、
「ピーン」という音とともに蓋が開いた。
なぜそんな事をいうのか判らなかった。
だが、やってみると出来ない。
何度も何度もトライして、
いつの間にか自分でもZIPPOを
持つようになっていた。
普通の人でも物に対してこだわりを持ち始めた
バブルのはじまるズーッと前の
学生の頃の話だ。
何気ない振りをして、
音がしたほうを振り返ってみた。
カジュアル中年がカウンターにいた。
「フーーン。」
羨ましさ半分、何時まで引きずってるのと批判半分。
口ごもりながら、
僕は二本目に火をつけた。
原色の100円ライターで。